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 あっけからんと答えられてしまった。しかも田中は長期療養中の班員で、その分までやってくれたのは間違いなく真千子にとってありがたい。ちょうど、今日残業してでも片付けてしまわないと、と思っていたのだ。 「あ……そうですか」  しかし、気を削がれた真千子は礼を言うこともできなかった。由紀は気にせずキーボードを叩き始める。こう、どうにもテンポを崩されてばかりのところも気に入らない、と真千子はその横顔から目をそらしながら思う。  ろくでもないことは続くもので、昼ごろ頭が痛くなってきた。真千子は昔から夏になると偏頭痛が出る。五月のくせに、季節外れに暑いせいかもしれない。あと数時間の辛抱だ……と思っていたとき、由紀のデスクの電話が鳴った。 「はい、坂之上です。丸シン商会さん?……えっ、代理納付していただけるんですか」
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