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 真千子は無言で助手席に乗り込んだ。滞納者を訪問する際は複数かつ班員どうしで行くのが基本だ。田中が療養中、もう一人の川添が出張中となれば選択肢はほかになく、また断る口上も持ち合わせていなかった。 「公用車にカーナビつけてほしいですよねー」 「……そんな予算はないでしょう」 「ですよねえー。あ、出発します」  すうっと抵抗なく発進した。初度登録から十五年以上経ったオンボロ車は誰が運転しても車酔いを起こすと評判で、実際真千子も先日乗せられたときにひどい目にあったのだが、由紀はそれほど運転が上手いのだろうか。 「……案内したほうがいいですか」 「大丈夫ですよ。慣れてるとこだし覚えてきたので。それより班長、疲れてらっしゃるんじゃないですか? 寝てていいですよー」
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