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「まさか」  どうして、気づかれていたのか。正直ありがたい心遣いだった。頭痛はかさを増し、ズギンズギンと額の上あたりにのしかかってくる。しかし、じゃあお言葉に甘えて、というわけにいかないだろう。 「平気ですから」  由紀が微笑むのがなんとなくわかった。 「無理しないでくださいね。って連れ出した私が言えたことでもないんですけど」  返事はせずに、真千子は頭の中で臨場の予習を始めた。会いに行くのは山野トシロウ三十歳。滞納は自動車税五台分で複数年度にわたるが車の名義は全て移転済み。いずれの車両も騙されて名義だけ貸したとの申し立て。調査するも財産、勤務先は不明。しかし今回由紀が実家に催告書を送ったところ、勤務先の社長から代理納付の申し立てがあった。つまり親族の会社で働いている可能性が高い。  車は進む。碁盤目状の街中を抜け、まもなく通行量は多いがゆるやかにカーブの続く郊外に出た。照りつける日射しは脚にしか当たらないのに頭痛がおさまらない。真千子はゆっくり目を閉じて堪えた。これで、もし悪い運転だったら吐いていたかもしれない……
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