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 行きと同じゆるやかなドライブが始まった。AMのラジオが誰かの恋の歌を歌う。西日が強く差し、由紀はサンバイザーを下ろした。 「だいぶ遅くなってしまいましたね」  窓の外の夕暮れを見ながら、真千子はふと世間話のようなことを呟いた。 「そうですね。ぎりぎり定時には間に合うと思います。すみません」 「坂之上さんのせいではないですから」  フォローするような言葉まで口から飛び出した。動揺してつい、言葉を足してしまった。 「遅くなってお子さんは大丈夫なんですか」 「えっ? 子ども……あ、ああ」  由紀は一瞬とまどってから苦笑した。 「大丈夫です。そういう子供ではないので……。ところで、班長はご結婚は?」
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