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 課長と由紀は並んで上り列車に揺られた。混んでいたので出入り口の近くに陣取った。 「村岡さんはどうなの?」 「良い班長です。仕事も知識もしっかりしてるしコメントは手厳しいけど的確だし」 「そうだなー。主査で班長任されるんだから色々買われてのことなんだけど。……けどさ、あの人こわくない? こわいっつーか強いっつーか」 「そうですねー。でも、こわくはないですよ」  由紀は笑って、そして真面目な顔になった。 「ないですけど、私、ひとつ謝らなきゃいけないことがあるんです。……班長、今日どうしちゃったんだろう……」  長い時間をかけて、真千子のアパートについた。今日も三階まで上るだけで汗が垂れ落ちるような陽気だ。数回チャイムを押したが応答はなかった。 「ここだよね?」 「ええ」 「メーター……微動か。冷蔵庫くらいしか付いてないぞ、これ」 「ですよね……あれ」  由紀は試しにドアノブに手をかける。すると、くるっと回ってしまった。
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