30/34
前へ
/34ページ
次へ
 ドアノブの回る音がした。その時真千子が感じたのは、恐ろしさなどよりも圧倒的な安堵だった。 「班長……、村岡さーん! お邪魔します! 鍵あいてたので! すみません!」  視界に由紀がうつった。部屋を見渡し、奥で倒れている真千子を見つけ急いで駆け寄ってくる。 「班長!」  真千子は抱き起こされた。由紀の体は冷えていて気持ちが良い。 「大丈夫ですか、しゃべれますか」  頭を緩く横に振る。喉が乾いて声が出ないのだ。 「たぶん……もしかして軽く熱中症かな……これ飲めますか」  鞄から出てきたスポーツ飲料を渡される。飲みさしだが嫌だとは思わなかった。ゆっくりゆっくり、一口ごとに頭がクリアになっていった。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加