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「……ありがとう」  ようやく声が出た。いつの間にかつけてくれたクーラーで部屋も冷えてきた。なぜ由紀なんだと気になったが、気には障らなかった。ほっとして、大事になってしまったと思ったもののどうでもよかった。由紀は隣に座って真千子をじっと見つめている。 「救急車、呼びますか」 「大丈夫……だと思う」 「じゃあ、あとでタクシーで病院に行きましょう。……良かった。もう、所長が脅すから!」  由紀は長く詰めていた息をようやく吐きだして言った。 「え? 所長?」 「いえ、違うんです……いや、違わないです。班長、ごめんなさい! 私、嘘つきました」  謝罪に真千子は首を傾げる。 「嘘?」
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