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「村岡くん」  山ほど積み上がった決裁書類を上から片付けている最中だった。 「何でしょう」  振り向きもせずに答えた。つんけんした声が出る。当たり前だ。こちらの書類は決裁期限まで半日もないし、あちらの書類は依頼文の体裁が全く整っていないのだ。  真千子が勤めているのは県庁の「自然発電推進課」で、知事の特命で新設された二年前に配属になった。課長、係長といずれも前の部署で功績を挙げた人間が揃っていて、班員もより抜かれた精鋭ばかり……のはずなのだが、どうにも真千子が注意しないとろくでもない書類ばかりが回ってくる。  あの日まではそんなだらしなさもかわいく感じていた。今はもう無理だ。直しを頼みに行くことすらまっぴらごめんだった。 「ちょっといいかな」  真千子の不機嫌さを気にせず課長は言った。
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