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 バゲットもケーキも買えなかった。 「いやあまさか村岡くんとはなあ。よくやってくれていたのに、これから大変になるよ」 「他にも頼りになる方はいらっしゃいます」 「そういう謙虚なところがいいね。ほら、空っぽだぞ。ビールでいいか?」 「頂戴します」  年度末の忙しさにまぎれて、今日が内示発表の日だなんてすっかり忘れていたのだ。まさか自分が異動になるなんて。そんなタイミングではなかった。どちらかといえば……あちら、のはずだった。  前の課で新卒採用の彼と知り合って四年、付き合って二年、全く偶然同じ課に配属されてさらに二年。向こうが八歳下で関係は誰にも言ったことなどない。しかし真千子は今疑っていた。ばらされて厄介者になった自分がこうして異動させられるのではないか。
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