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 馬鹿げた妄想だ。たかが主査と主任の色恋沙汰に人事が構うものか。だがこの年で捨てられた女が扱い辛いのも事実だ。それに、よりによって本庁を追い出されるだなんて。  これから仕事に生きようと思っていた。部屋だって通いやすいところに借りた。それらがすべて無駄になってしまったのだ。 「村岡さん。お世話になりました。お酌させてください」  注がれたビールをぐいっと飲み干す。バゲットもケーキも遠かった。この場にあの男が来ていないことが唯一の救いだった。周りから人が離れた瞬間真千子は下を向き、今度こそ、声を出さずに大きなため息をついた。
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