1 子供の死

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「可能性を言ったまでです」 オレがそう言うと、 「まあ、あり得ん話じゃないがね。ご両親の話だと、特別身体が悪かったわけでもないらしいから、突発的な症状ということになる。だから毒物の線も無いわけじゃない」 と、上司はそう言って、こちらの肩をポンと叩いて外へ出て行った。 解剖の結果、子供の死は病死と断定された。 病名は肺炭疽。 肺炭疽とは一種の感染症で、芽胞の吸入によって起こる症状だった。 両親は、子供を置いて、夫婦旅行に行き、一泊二日で帰ってきたようだが、その間に子供には、肺炭疽による症状である、発熱、悪寒、倦怠などの風邪に近い症状が出て、その後呼吸困難に陥り、チアノーゼとなった後、昏睡状態になったのだろうと推測された。 肺炭疽は急性の症状が起こった場合、24時間以内に急死に至る可能性も高いと言われ、子供にかなり苦しんで亡くなった形跡があるのは、呼吸困難によって暴れたためだろうと思われた。 炭疽は生前に見つけ出すことは困難と言われており、もし、子供が食肉を食べた時に感染していたとしても、その症状は発覚しなかったろうと思われる。     
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