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「そんで、」 山南さんは烏龍茶を一口飲んだあと、盛り合わせの中から鶏皮串を手に取りつつ言った。 「僕からどんなことを学びたいって話?」 「ああはい。……いや、つくづく俺、報告書書くのが苦手だな……って、何となく思っててですね」 新聞に載るような事件が起こらなくても、刑事課の仕事は日々細々と発生している。 事件が起これば当然それに伴う書類も必要になるわけだが。……正直、事件解決まで奔走したあとの報告書が、どうしても面倒くさいと思ってしまうわけである。積み重なったりすると特に。 「山南さんは、いつ見かけてもその辺黙々とやってるし……実際提出される書類早いし丁寧だしで……何かコツとか心構えとかあるんですかね、って」 「うーん」 俺が言うと、山南さんは少し考えるような顔で小首を傾げる。 「報告書が、苦手」 「はい」 「っていうか、嫌い?」 「……。はい」 ズバリ言われて、一瞬迷ったが正直に答えることにした。 それで馬鹿にするような人ではないともう思っているから。むしろ、正確に伝えた方がきちんと答えてくれる人だと。 「じゃ、いいんじゃないかな。嫌いなら嫌いで。無理に好きになろうとしなくても」 「ええー……?」 「実際君は嫌いっていいながらちゃんとやってはいるわけじゃないか。そこには周りに迷惑かけない、とか、仕事だから、とか、お金のため、とかそれなりの心構えがきちんとあるわけで。それならそれで十分偉いと思うな」 ……え、いや、そういうものだろうか。
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