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「少なくとも、無理に好きになろうとして、そうなれない自分を嫌いになるよりかは、嫌いなものは嫌いのままでいた方がましかなって」 ううむ。そう言われると。確かに好きにならなきゃと自分を追い込むのはよくない、のか? 「……でも、自分を嫌いにならない程度に好きになろうと出来たらもっと良くないですか?」 「まあ、それもそうだね。勿論苦手を克服しようとする、この心掛け自体は悪いことじゃない。ただ、報告書の類いとなると、僕は単に元々嫌いじゃないからなあ」 「……特に、説明できるようなものじゃない、と?」 「いや、僕なりに理由はあるよ。ただ、所詮好きなやつの意見って、嫌いな人から見たらただの綺麗事じゃないかなーって」 「……なんかよかれと思って皮肉言われた思い出でもあるんですか……」 いまいち気が進まなそうな山南さんに思わず俺が言うと、山南さんは少し視線を浮かせて、それから小さく一呼吸した。 「まあ、それも良くある話だよね」 そして、平気そうに言う。 「……愚痴ってくれていいですよ?」 一瞬、気持ちを整理して落ち着けたでしょう。 「別にそんな大したことでもないよ。気持ちはありがたいけど、こんなことわざわざ蒸し返すのは逆にあれかな」 山南さんは笑った。 ……この場合、それが正しい気もする。変に踏み込もうとすべきじゃない……か。 「そんなわけでまあ、好きなやつだから言える綺麗事でも、もっともらしいこと言われると数日くらいはちょっとその気になるパターンもあるし、その程度の気休めでよければ言えるけど」 結局、考えてるうちに山南さんが話を戻した。 ……そう言っちゃったら、気休め効果も半減な気がするけど……。
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