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事件の一報があったその日、俺は夜勤だった。
晩の間は、特に何か起こるわけでもなく。俺は、この間の山南さんの話を反芻しつつ、書類の整理なんかを行っていた。
全てが分かった状態から、改めて事件を、その過程で見つかったものの意味を考え直す。
なるほどそう考えると単調作業とも言えなくなる。少し気持ちが楽になった気がしたところで……欠伸が出た。
夜勤に備えて昼にしっかり寝ておいたとはいえ、やはり人間基本的には昼に活動するように出来てるのだと思う。
蛍光灯の明かりだと夜の薄暗さは払拭しきれず、壁の隅の影やらなにやらから、もう寝る時間だぞ、と訴えられている気がする。
……要するに、集中力はあっさり崩れつつあった。
……そりゃ、山南さんも気休めだとは言ってたけどさ……。
そんな風に、弱い方に流されそうになる自分を叱咤しつつ夜を過ごし、朝が訪れる。
交代の時間まであと一時間弱。通報の電話があったのは、そんなタイミング。
あと少しで上がれたのに……という気持ちが無かったわけではない。夜を明かした身体はいよいよしんどかった。
だけど。
ホテルの一室で、客が死んでいるという通報には、意識を醒まさない訳にはいかなかった。
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