プレゼント

4/11
前へ
/11ページ
次へ
ある時、久しぶりに家に帰って来た父が食事を済ませ、一人お風呂に入りに行った。 私はいつも父と入っていた為、久しぶりに帰ってきた父の後を追って、一緒に浴室に入ろうとすると、父は困った顔をして「そろそろお父さんと入るのはやめよう」と言った。 浴室にすら入れてもらえなかった。 ふて腐れてリビングに戻ると、ソファの隅に父の携帯電話が置いてあった。 私がこっそりと携帯電話を覗くと、着信履歴には自宅や母の番号に混じって、同じ女性の名前が数件入っていた。 同じくメールにも当たり障りのないメッセージがあり、その女性らしき人と写る写真まで保存されていた。 浮気しているのかな……。 そんな疑惑が私の中に芽生えたが、直接聞く事は出来なかった。 父の出張は、いつまでも終わらなかった。 母もまた、その頃からよく家を空けるようになった。 父からの電話はほとんどなくなり、母はいつも忙しそうで疲れているようだった。 家で私が一人になる日は、近くに住んでいた祖母が来てくれた。 祖母の事は大好きだったが、足の不自由な祖母に来てもらうのが申し訳なくて、一人で留守番をする事が多くなった。 寂しさから父に電話をかけたが繋がらず、母の携帯を借りてはメールを送った。 しかし、メールの返信はいつも、「会えなくてごめん。愛してる」という短いものだった。 そして、送られてくるプレゼントは数を減らし、私だけのプレゼントになった。 父は家に帰って来なくなり、母も寂しさからかパートを始め、私は一人ぼっちの時間が増えていった。 きっと両親は離婚して、母は私を育てる為に働いているのだと思った。 そのうち、母は夜も家を空けるようになった。 疲れているせいか母はよく苛立っていて、私は私で父への寂しさもあり、よく母とは喧嘩をした。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加