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ある時、久しぶりに家に帰って来た父が食事を済ませ、一人お風呂に入りに行った。
私はいつも父と入っていた為、久しぶりに帰ってきた父の後を追って、一緒に浴室に入ろうとすると、父は困った顔をして「そろそろお父さんと入るのはやめよう」と言った。
浴室にすら入れてもらえなかった。
ふて腐れてリビングに戻ると、ソファの隅に父の携帯電話が置いてあった。
私がこっそりと携帯電話を覗くと、着信履歴には自宅や母の番号に混じって、同じ女性の名前が数件入っていた。
同じくメールにも当たり障りのないメッセージがあり、その女性らしき人と写る写真まで保存されていた。
浮気しているのかな……。
そんな疑惑が私の中に芽生えたが、直接聞く事は出来なかった。
父の出張は、いつまでも終わらなかった。
母もまた、その頃からよく家を空けるようになった。
父からの電話はほとんどなくなり、母はいつも忙しそうで疲れているようだった。
家で私が一人になる日は、近くに住んでいた祖母が来てくれた。
祖母の事は大好きだったが、足の不自由な祖母に来てもらうのが申し訳なくて、一人で留守番をする事が多くなった。
寂しさから父に電話をかけたが繋がらず、母の携帯を借りてはメールを送った。
しかし、メールの返信はいつも、「会えなくてごめん。愛してる」という短いものだった。
そして、送られてくるプレゼントは数を減らし、私だけのプレゼントになった。
父は家に帰って来なくなり、母も寂しさからかパートを始め、私は一人ぼっちの時間が増えていった。
きっと両親は離婚して、母は私を育てる為に働いているのだと思った。
そのうち、母は夜も家を空けるようになった。
疲れているせいか母はよく苛立っていて、私は私で父への寂しさもあり、よく母とは喧嘩をした。
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