プロローグ

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プロローグ

今日も暑くなりそうだなと、窓から入る日差しに少し憂鬱になりながらも突入した夏休みに、此ノ院 祐(このいん ゆう)は心弾ませていた。 冷えた麦茶を飲みつつ朝食の席に着いた祐は、視線をテレビへと向けた。 テレビでは、地元である贔屓の赤いユニフォームを着た選手が活躍する姿が映し出されており、祐は顔を綻ばせ昨夜の試合を思い出しながらご飯を口に運んでいた。 高校二年の夏休みが始まったばかりの祐は、心弾ませていたわりには、今年も何の変化も無い一ヶ月を過ごすものと思っている。 部活は「お料理クラブ」という名前の文化部なので夏休みの活動は無く、仲の良い友人は部活に明け暮れる毎日。 なので会って遊ぶ事も難しい。 そもそも友人もインドア派だったりするので、夏を満喫するようなタイプではないのだ。 正直大きな行事といえば、お盆に祖父母の家へ行き親戚一同介するか、スタジアムにプロ野球観戦に行くかの二つだった。 そのイベントも夏休みが始まったばかりの今、当分先の予定となっている。 「はー…、暇かも」 ぼそりと呟けば、どうやら母の耳には届いていたようで呆れたような溜め息をつかれる。 「祐君、暇じゃないでしょう。宿題もあるし…それに毎日のご飯を作ってくれてもいいのよ?」 「えーっ、毎日は嫌だよ」 料理をするのは好きだ。 それは事実なのだが、家で作っていると必ず母が手順等に対して口出しをしてくるので正直落ち着いて出来ない。 好きと上手は違うのだ。
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