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そのピンポイントをついてくる店員の言葉を聞いた誠司が、ギクッと固まる。
「ちょ、ちょっと下見で。でも、こんなことになるなんて思いもよらなかったんだもの」
「ホームグラウンドで勝負に出ようとするのがセイちゃんらしいけどね。……セイちゃんも冒険してみたら?」
「冒険?」
店員は、宗田が差し出したクレジットカードを受け取りながら語りかけた。もちろん、支払回数を聞くのも忘れない。
「セイちゃんの彼氏さんがこんな所そぐわない所に一人で来たんだもん、セイちゃんも勇気出そうよ」
「うん……」
ちらりと、宗田に目を向ける。宗田は変わらず、涼し気な顔だ。
「あのね、ユウさん」
「あ、あといちゃつくなら店の外でしてもらっていい?」
***
「驚いた」
「何が?」
二人は並んで、アクセサリーショップを出た。プレゼントはクリスマスのお楽しみ……ということで、ピアスが入った小さな袋は宗田の手にある。
「……誠司は、いろんな人に知られているんだな」
「……んん? 何のこと?」
「交際相手が俺だということ」
宗田は、誠司を見上げる。その瞳をみて、誠司は小さく微笑んだ。
「私、こんな話し方だから、オネエがバレるの早いのよ。『コレ』でも良いっていう人はみんな優しいし……私が、どんな人と付き合ってても、ちゃんと受け入れてくれる」
「……そんなものか」
「どうして?」
「いや……」
院生・鈴木の「バレたらどうするんですか?」という言葉を思い出す。朗らかに語る誠司だが、『ソレ』のせいで彼が辛い目に遭っていたことも、知っている。その暗さですら照らす、誠司の明るさが宗田は好きだった。
「ねえ、ユウさん。ユウさんって、いつもどこで、仕事用の服買うの?」
「え? ……適当に、そこらへんで」
「もう! 相変わらず無頓着なんだから……ねえ、私も、ユウさんが似合うものプレゼントしたいな」
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