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話は巡り巡って、行きついたところはスタート地点と同じ場所だった。三人は、大きくため息を吐く。窓の外はクリスマスの明るいムードを纏い、どうしてあんなに楽しそうなんだろう……プレゼントのことを悩み始める前は、誠司も楽しみで仕方がなかったのに。楽しみが増える、幸せが増えていくたびに、悩み事が一つずつ増えていく。
しかし、それはすべて宗田の事なのだから、誰かに話しても「ただの惚気」という言葉に片づけられてしまう。それも、悩み事の一つだった。
「じゃああれは? ネクタイにつけるやつ」
「なんだよ、あ、ネクタイピンの事か」
「そう、それ!」
「ネクタイピン、ねえ」
「セイちゃんの好きなアクセブランドで売ってないの? そういうの」
「どうだろう、見たことないけど」
「じゃあさ、今日の帰りに見てきたら? 今日早上がりでしょ、セイちゃん」
「うーん、そうしようかなぁ」
いつもいくブランドショップ、そういえばそろそろ新作が入荷すると店員が話していた気がする。
うじうじとした悩みに、うら若き高校生二人が背中を押した。その目には、ただ一つ……「好奇心」という色が浮かんでいた。
***
「……いらっしゃいませ」
カウンターの内側に立っているショップ店員の女性の笑顔は、ぎくりと強張った。
このアメリカ発祥のブランドは、どちらかと言えば武骨でワイルドな……男らしいデザインで定評がある。それなのに、目の前にはかっちりとマフラーを巻き、視線が鋭く、線の細い男性が立っている。その男性客は、彼女が立っている真向いのカウンターに立ち、ディスプレイケースの中をじわじわと、舐めるように見つめていた。
「何か、お探しですか?」
恐る恐る聞くと、眼鏡の向こうにある鋭い眼光が自分の方を向いた。背筋か少し強張る。……しかし、その客から出てきた言葉は、なんとも可愛らしいものだった。
「……アクセサリーって、何が人気なんですか?」
「……え?」
「いまいちピンと来なくて」
「お客様ご自身が使いますか? それとも……」
「贈答用です」
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