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きゃあきゃあと、元気で楽しそうな子供達の声が澄み渡った青空にこだまする。
「さあ、みんな。名残惜しいけどそろそろ解散にしようか」
子供に負けず劣らずと言った感じで遊びに興じていた、まだ年若いひとりの青年が声を上げる。
人より上背もあるせいか、小さな子供達の中でその姿は一際に目立っていた。
「えーっ、もう?」
「なあ、また遊んでくれる?」
「うん、勿論。また次も面白そうな所に連れて行ってくれると嬉しいな」
「分かった! ちゃんと考えとくから楽しみにしててな」
わーっと蜘蛛の子を散らすようにして子供達が各々の家へと帰って行く。
壬生寺の境内から最後のひとりが見えなくなるまで、沖田総司はひらひらと手を振り子供達を見送った。
「今日も収穫あり。さて、私も帰るかなあ」
指に引っ掛けた小さな巾着袋を弄びながら、ざりざりと砂利を踏みしめ歩き出す。
寺の門を出てすぐの所で、意外な人物が仏頂面で立っている事に気が付いた。
「あ、こんな所に鬼見っけ。と言うか、どうしたんですか土方さん。何だか潰された蛙みたいな顔になっちゃってますよ?」
「まったくてめぇってヤツは……出て来る比喩がいちいち嫌味なんだよ」
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