狼たちのささやかなる休息

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 この人物、端正な面持ちながらも、周りの人間からは鬼と怖れられている。  新選組の副長を務める、土方歳三(ひじかたとしぞう)と言う男だ。  それを相手にこんな嫌味を言えるのは、この沖田くらいのものだろう。  二人は、新選組の局長である近藤勇(こんどういさみ)と共に、江戸に居た頃からずっと兄弟のようにして過ごして来た『勝手知ったる仲』と言う奴だった。 「非番の度にガキ共と遊び回りやがって。たまには祇園(ぎおん)や島原にでも繰り出しやがれ」 「祇園の白川には、この間鴨を見に行きましたよ。親子連れで泳ぐ姿が可愛かったですねぇ」 「馬鹿、そう言う意味じゃねぇよ! しかも鴨ってとこが気に食わねえ!」  冗談に決まっているのにと、沖田は小さく肩をすくめた。 「非番なんだから、私が何をしようと構わないでしょう? それに、子供達と遊ぶのはとても勉強になります」 「勉強だと? ガキと徒党を組む事がか?」 「はい。あの子達は私にとって、非常に優秀な先生です。少なくとも今の新選組は、あの子供達よりずっと劣っていると思いますよ」
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