13人が本棚に入れています
本棚に追加
この人物、端正な面持ちながらも、周りの人間からは鬼と怖れられている。
新選組の副長を務める、土方歳三と言う男だ。
それを相手にこんな嫌味を言えるのは、この沖田くらいのものだろう。
二人は、新選組の局長である近藤勇と共に、江戸に居た頃からずっと兄弟のようにして過ごして来た『勝手知ったる仲』と言う奴だった。
「非番の度にガキ共と遊び回りやがって。たまには祇園や島原にでも繰り出しやがれ」
「祇園の白川には、この間鴨を見に行きましたよ。親子連れで泳ぐ姿が可愛かったですねぇ」
「馬鹿、そう言う意味じゃねぇよ! しかも鴨ってとこが気に食わねえ!」
冗談に決まっているのにと、沖田は小さく肩をすくめた。
「非番なんだから、私が何をしようと構わないでしょう? それに、子供達と遊ぶのはとても勉強になります」
「勉強だと? ガキと徒党を組む事がか?」
「はい。あの子達は私にとって、非常に優秀な先生です。少なくとも今の新選組は、あの子供達よりずっと劣っていると思いますよ」
最初のコメントを投稿しよう!