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道長はそれを聞くと、少し足を止めて俯きながら息を吐いたのでした。
「私は兄弟の中でも五男でしたから期待などされた事もなかったー」道長
道長には兄弟が多くおり、その中でも道長は本家筋ではあったものの五男として生まれた為、先に生まれていた道隆や道兼といった有力な兄たちがいた為、道長は特に父である兼家には期待されず、いつも兄たちに注目が行き道長は一族の中ではさほど目立つ存在ではなかったのです。
しかし、父である兼家、そして兄たちの死をきっかけに生き残った道長はようやく唯一の本家筋の跡取りとして一族から注目を向けられるようになったのでした。
右大臣は道長の父、兼家を知る為、道長の宮中での活躍ぶりを複雑な気持ちで側で見ていたのでした。
そして道長は少し遠くを見つめながら言ったのです。
「私は父とまともに会話をした記憶が無い故わからぬが…どうお思いなのだろうか…」道長
「左大臣殿…」右大臣
それはまるで、長い間ひっそりと隠れていた様な道長の父に対する素直な思いがほんの一瞬だけ道長の顔を在りし日の幼き頃の顔に戻したのでした。
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