43人が本棚に入れています
本棚に追加
/309ページ
「橙子…!」懐仁
懐仁様は佐倉宮様の言葉に思わず少し声を荒らげてしまったのでした。
しかしそれでも佐倉宮様はそのまま言葉を続けたのでした。
「私はお母様が宮殿を離れる折に、お父様をお支えするようにと言われました…」佐倉宮
「なれど…どうやら私には到底お父様をお支えするなど出来そうにありません」佐倉宮
佐倉宮様は涙を流しながら懐仁様にそう言い放った後、そのまま何も言わずにお部屋を後にしたのでした。
懐仁様は黙って去りゆく我が子の後ろ姿をただ何も言えぬまま見ていたのでした。
そして再びお部屋で一人きりになると、懐仁様はずっと堪えていた涙を溢れさせたのでした。
「すまない…橙子よ…!」懐仁
「愚かなこの父をどうか許してくれ…」懐仁
懐仁様は泣きながら佐倉宮様に詫びたのでした。
その姿は普段は決して誰にも見せる事のできない、懐仁様のとても弱々しい姿だったのでした。
それから2日後ーーー
藤原家の姫、藤原定子が宮中に入りいよいよ新皇后が誕生したのでした。
最初のコメントを投稿しよう!