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「若草宮様…」女官
「私は…私の御心には今でもあの方が居られる…故に私が心から道長殿と夫婦になることを望むことはないであろうーー」若草宮
皇女様は静かにそう言ったのでした。
そして少し間を置いてからまた静かに皇女様は言ったのです。
「…故にこのまま一生、籠の鳥になろうと私は喜んでそれを受け入れようーー」若草宮
「だがしかし、万一の折は…道長殿が夫婦にと決断なされた折には私はそれに従うつもりだ」若草宮
皇女様はいつの間にか涙を流しながら聞いていた女官にそう告げたのでした。
そしてそれは、皇女様が宮殿を出られてからずっと胸に秘め固く決められていた覚悟だったのです。
そしてその夜ーーー
道長は数ヶ月ぶりに皇女様のいる別邸へと足を運んだのでした。
「若草宮様、藤原様のお越しでございます」女官
女官がそう言うと道長は襖を開けて部屋に入ったのでした。
「久方ぶりにございます…皇女様」道長
道長は黙って少し頭を下げている皇女様にそう言ったのでした。
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