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それからしばらくして皇女様と懐仁様は縁側に腰を下ろしたのでした。
「…何故こちらにおいでになられたのですか」若草宮
皇女様は前を向いたまま落ち着いた様子でそう言ったのでした。
懐仁様もまた前を向いたまま静かに言ったのでした。
「聡子の望みを叶える為…ここに来た」懐仁
「えっ…」若草宮
皇女様は思わず懐仁様の方へと向くと懐仁様はそのまま話を続けました。
「このまま皇后を迎えなければ、橙子に危害が及ぶ」懐仁
「えっ…」若草宮
「橙子は余と聡子の間の唯一の子だ守ってやりたいーそれが父としてまたそなたを愛した証として当然の事だ」懐仁
「懐仁様…」若草宮
「…だがそれでも、余は…そなた以外の正室など迎えたくないのだ」懐仁
懐仁様は涙を堪えながらそう言ったのでした。
皇女様は懐仁様の言葉に胸が締め付けられる思いで聞いていたのです。
そして懐仁様は皇女様の方へと向くと真っ直ぐと皇女様を見つめながら言ったのでした。
「だがそれは、余の願いだ…そなたの思うところではない」懐仁
「故にそなたの望む事を言え…余はそなたが望む事をしてやりたいのだ」懐仁
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