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第25章 前代未聞の嵐
それから数日経ったある日の宮殿では、もうすぐ懐仁様の25歳のお誕生日を迎える為の準備が行われていたのでした。
「今年は凶作の故に余の誕生祝いの宴は質素なものでよいと言うたであろう」懐仁
「しかし恐れながら陛下、今年は皇后様が初めて参加なさる陛下の祝いの宴でございます」長官
長官は少し俯きながらそう言うと懐仁様は少し目線を逸らしながらため息をついて言ったのでした。
「宴を行う気分ではない…出来る事なら宴すら開きたくないのだ…」懐仁
そう言った懐仁様の表情は長官から見ても、それはとても切なく悲しい表情だったのでした。
そして懐仁様の気持ちは長官にもわかっていました。
しかしその口には出来ぬ寂しさと悲しみ…そして日毎に募る恋しさは懐仁様の心を孤独にしていき、一番側で仕える長官にもその痛みが伝わっていたのでした。
そして懐仁様はまるで独り言のように呟くように言ったのです。
「初めてではないのか…聡子が居らぬ余の誕生祝いは…」懐仁
「陛下…」長官
「わかってはいるのだ、皇女を守る事が聡子が余に託した唯一の望みだとーー」懐仁
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