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帰り電車の結衣を高揚させるのは、友香との楽しかった時間、最愛の息子に逢える嬉しさ、そしてこの手にぶら下がる二つのプリン。
今頃途方に暮れているであろう夫へのプレゼント。
「・・・喜ぶかな。」
帰ったら今日のお留守番を、子守を盛大に労わってあげよう。
大好きなプリンを感謝の言葉とともにわたそう。なるべくさり気なく。
結衣の頭の中のイメージは、ピッタリ夫の姿と重なった。
クタクタな結衣に優しい言葉と一緒にいつも「よかったら」と本を手渡す夫。
夫はやはり諦めてはいなかったのだ。
二人が平行線なのはやっぱり変わらない。
でも今は、その二本の線は前よりずっと近づいた。
嵩張ってもいいから夫がプレゼントしてくれた本を持ってくればよかった、と結衣は思った。
―――了―――
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