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「こわい、こわい、こわい……いやだ。私を見ないでください」
男達に囲まれて、ビクビクと怯えている冬野。
そんな幼気な少女の姿に、先ほどまで警戒を高めていた男達は安堵の息を漏らして。頬を緩めた。
「オイオイなんだ?この女だけは弱そうだぞ」
「お前等!まずこの女から仕留めるぞ!」
「ついでに遊んでやろうぜぇ~。いい女だしよぉ~」
冬野に近づく男達。
しかし、その少女の肩を掴んだ途端ーー。
男の身体が、まるでペラペラな紙のように宙へ吹き飛ばされ。そしてはるか上空から投げ落とされたかのように、身体を思いっきり地面へ叩きつけられてしまった。
目をやるのも痛々しいくらいの損傷。
それを目の前で突きつけられた他の男達は、腰が抜けてその場でへたり込んだまま動かない。
ただ立っているのは、幼気な少女のみ。さっきとは立場がまるで逆だ。
「い、一体……なにが……」
「まさか……今のは、魔法……なのか?だ、だが。詠唱を唱えてないはず!なのに何故!?」
冬野が一歩前に出る。
「私、人前で話すの苦手なんです……。だから詠唱なんて唱えなくても魔法が使えるようにしました。今では下級魔法から、上級魔法まで全て使えるんです」
「そ、んな……馬鹿な話が」
「あの、私。凄く人見知りなんです……なので……消えてください」
なんとも一方的な理由で、男達はありとあらゆる魔法によってその命を消されていく。
炎で焼かれ、押しつぶされ、氷漬けにされ。
きっと冬野に使えない魔法は、もう存在しない。
「はぁ~……怖かったです……」
一番怖いのはお前だ。
「こっちも終わったぜ!五十嵐!」
いや、もっと怖いのがいた。
「お前、それで俺に抱きついてでもしてみろ?殴るぞ」
「え?俺、汚いか?」
汚いも何も、アルストリアの全身は血まみれだ。
しかも自分のじゃない。全部返り血。
それなのにコイツは、その血を拭おうともせず。いつものキラキラした笑顔で俺の元へ来るのだ。
これはもう、異常としか言いようがない。
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