一章 俺の最弱パーティー

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そんなことを思いながら、騒がしいメンバーの中で一人静かに酒を嗜んでいると。後ろの客席から気になる話が聞こえた。 「なぁ聞いたか?また盗みだってよ」 「聞いた聞いた。しかもあれだろ?金を盗まれた挙句、そこのパーティー全員殺されたんだろ?こえぇよな」 「最近増えてきたよなぁ、ルール―を破る奴等が」 「これじゃ安心して仕事できねぇぜ」 どうやら話の内容は、最近続いている事件の事の様だ。 「いやねぇ~血生臭い話は。お酒が不味くなっちゃうわ」 どうやらネイルも客席の話を盗み聞きしていたようで、不愉快な顔をしながらもビールを一気飲みする。 「なぁ!許せないよな!冒険者ならちゃんとルールを守って仕事しろって話しだよ!な!五十嵐!」 「あ、あぁ……」 勝手に怒って、しかも何故か俺に話を振ってくるアルストリア。 酒は飲んでないはずなのに、ノリがまるで酔っぱらったおっさんだ。俺より七つも年下のくせに。 「でもあれよねぇ~。五十嵐ちゃんも平気でルール破っちゃいそうなタイプよね~。というかちゃんとルール覚えている?」 「馬鹿にするな。覚えてるに決まってるだろうが。もう何年この仕事してると思ってんだよ」 「あらあら、ごめんなさいねぇ」 完全に俺をヤンキー扱いしてやがるな、このオネエ。 だいたいルールくらい覚えていないと、冒険者なんてやっていられない。 「一つ『無駄な殺生をしない』二つ『盗みをしない』三つ『裏切り行為をしない』これを破った者にはーー」 「『化け物達からの制裁が下されるだろう』ですね!だからその犯罪者さんも、いつかきっと化け物さん達から罰を下されますよ!」 無邪気な笑顔のまま、平気で恐ろしい事を口にする来栖に思わず頬が引きつる。 だが言っている事は間違いではない。 この三つのルールを一つでも破った者には、化け物からの制裁が下される。という言い伝えがある。 実際今までルールを破ってきた冒険者達のほとんどが、行方不明になっている。 前のパーティーが潰れた理由もそれだ。 アイツ等はルールを破って、盗みを働いていた。だから潰されたのだ。 だが、今でも信じていない奴等の方が多い。 まぁそれもそうだろう。「化け物が」なんて言われても普通ピンとこないものだし。実際見た奴もほとんどいない。仕方のない事だ。
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