第1話 神隠し(上)

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外は月の無い闇夜。凍てつく空気に、息が白く滲む。 男はビルの屋上にいた。 上を見れば、月も星も沈んだ漆黒の闇。 下を見れば、寝静まった街の街灯や深夜営業の店のネオン、まれに車のヘッドライトが灯る。 それらが高層ビルの屋上に、3つの影を作り出した。 そのうちの1つがブルリと小さく震える。劈くような寒さの為か、それともー 「俺を笑わせないでくれ」 『俺を嗤わせてくれよ』 男は黒いマスクを口元に当てた。そして片手をスッと上げると同時に、3つの影は闇へと消える。 しばらくすると宴が始まり、笑い声は静かに響き渡る。踊る足音と引き裂かれる悲鳴。血と肉を抉る感触に 酔い痴れる。 あぁ、なんと素晴らしく、冷たい夜だ。 冷たい 、 夜だ。
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