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〈1ヶ月前〉
朝、アクビをしながら講堂に入る。長めに伸びた前髪の隙間から教室を見渡し、空いている席を探す。
授業まであと5分。席はまだちらほら空いている。
壁際の後ろから3番目。丁度良い。
そこに座ろうと身体の向きを変えた。
「おはよー!白たん!!」
「白石くんだー おはよぉ」
後ろから声をかけられた。
呼ばれたのは俺だ。
振り返ると、175cmある俺より少し背が高く、細身でお洒落風な男が立っていた。その隣には小柄で可愛らしい女の子。男の方は恩田 透(おんだ とおる)。男とは思えぬほど綺麗な顔立ちで、本人はバイセクシャルを公言している。変わった奴だが、友達は多いようで、よく周りには誰かがいる。
女の子は…誰だったか。見たことはある。
「おはよう」
俺は微笑んで返す。
透は連れていた女の子と別れて、俺の隣に座った。
「お前がこの時間からいるなんて珍しいな。今の彼女?」
そう聞くと、透は椅子にもたれかかりながら言った。
「ちっがうよー!彼女はただの友達!」
そして、笑いながらこちらを見る。
「僕は白たんが好きなんだって ずっと言ってるじゃん」
(また言ってるな…)
多分、大学に入って出会った時からそんな事を言われている気がする。
言っておくが、俺の恋愛対象は女の子だ。
透にもそれは伝えてあるが、「うん、とりあえず大丈夫!」と言われたので そのまま友達でいる。
一体何が大丈夫なのか。
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