好きになって、本当にごめん。

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「ありがとうございます、父様」 少しばかり照れながら、笑顔を返した。 「おいで、馨くん」 両手をひろげてくれる。 もうそんな子供じゃない、と拒否をすればきっと、この優しい人は悲しそうに笑うのだろう。そんな顔をさせたくはない。 ぎゅっと抱きしめられると、父の吸う煙草の臭いがした。 少しだけ苦くて焦げた、大人の匂い。 温もりと混ざりあい、僕をとても安心させてくれる。 「大好きだよ、馨くん。君は私と(もえ)の宝物だ」 年頃の息子に恥ずかしげもなくこんなセリフを言い切れるのは、日本広しといえど、うちの父親くらいじゃないだろうか。海外育ちの破壊力、マジ半端ない。
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