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ーー気がついたら、目が君を追っていた。
「おーい、ゆーじん。これ見てみー」
級友が彼の名前を呼んでいる。
誰彼かまわず、彼の名前を呼べる奴は全て、
羨ましすぎて呪ってやりたい。
「はいよー。ちょい待ちー」
柔らかくて低い、ちょっとだけ軽そうな声。
きっといつものように万人に向けて振りまく、あのキラキラオーラ全開の笑顔で、彼はそこに立っているんだろう。
視線を上げて、穴が開くほど見ていたい。
でも、僕が彼を見てしまったら、
彼が僕を見てしまったら、
もし、僕なんて見えないようにふるまう彼の姿を見てしまったら、
今日一日、立ち直れない。
彼の視界に入りたくない。
僕なんか、彼の視界には存在しちゃいけない。
ああ、本当に僕は、この初恋を
今日もまた
こじらせまくっている。
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