29(承前)

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 作戦部・逆島少佐が解散を命じようとしたときだった。しわがれた声が頭上から降り注いだ。 「桐島(きりしま)天源(てんげん)元帥である」  銀のあごひげを胸まで垂らした老人がマイクを握っていた。進駐軍の総司令官だ。第二次レイテ沖海戦、クアラルンプール航空戦、数々の戦いで勝利を収めた東島進駐官養成高校の大先輩だった。かつての逆島派だが、将軍になり総司令の地位を狙うようになってからは、近衛四家とは等距離をおいている。 「訓練生諸君、きみたちのようにまだ若者ともいえないような少年少女に、この日乃元の未来を託すのは、この老いぼれもたいへん心苦しい。あと半世紀若ければ、なにをおいてもきみたちとともに『須佐乃男』に乗りたかった。敵兵力は圧倒的である。勝負を決めにきておるのだ。この決戦は容易なものにはならんだろう。だが……」
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