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「端的に言うなら、君が倒れ、病院に運び、入院するまでもなかったから、ここに連れてきた」  なるほど。わかったような、わからないような。 「倒れたって…。そんなこと初めてなんですけど、貧血か何かですか?」 「似て非なる。この現代日本においてまだ栄養失調があるとはな」  栄養失調。ぽかんと開いた口を、数秒してから閉じる。実は意外な事実ではなかった。心当たりがあった。いつかなるかも、という食生活だったからだ。 「ガリガリの見た目を裏切らない診断結果だな。医者によると、大したことはないが念のために一日入院することは可能だとのことだったが、おそらく君が望まないと思って断っておいた。主に入院費用について」  おっしゃるとおりです。入院費用がかかるなら這ってでも帰るところでした。言わないまでも表情で返した。 「だから点滴を打ってもらって、目覚めない君を俺の自宅に運び、深夜0時の今に至る」 「0時?」  ぎょっとして室内の時計を探したが見当たらなかったので、リュックから携帯を取り出して時間を確認した。まちがいなく0時を大幅に過ぎていた。やはり誰からも着信はない。 「すみません。しかもここ八奈見さんのお宅だったんですね」  高級セレブ病院ではなかった。高級セレブマンションの一室だったようだ。まあ、夏芽からしたらそこまで差異がないといえばない。生活感がなく、物が少ない。清潔すぎるほどに清掃が行き届いている。とても男性単身者の住まいとは思えない。いや、単身者と限ったわけではないのか。  そんな詮索の視線に気づいたのか、八奈見から説明がついた。
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