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おねーちゃんは、不安げな顔をしていた。
「……足りないよ」
僕は、びっくりした。
だって、おねーちゃんと僕は二つしか歳が変わらない。僕より知っていることが多いけど、大人のことまで知らないと思ってた。
なのに、おねーちゃんは、もう大人が欲しい物の値段を知っていた。
おねーちゃんが、お母さんとお父さんと同じ大人の仲間に入ったような気がした。
おねーちゃんが急に大人に見えた。
僕は、足りない理由を恐々と聞いた。
そしたら、おねーちゃんは、ぐっと両手に握りこぶしを作り、困った顔をして早口で僕に理由を打ち明けた。
「だって私、こないだ見た。いつものドラッグストアでお母さんが口紅買ってるの。見たもん。その時に、値段もちゃんと見た。1500円だったの。それにね、前にね、お母さんが言ってたの。デパートは、いつも買う物より高いんだって」
おねーちゃんも僕もどうしようと、眉をハの字にしてうんうん悩んだ。
僕らだけでは、どうにもならない気がした。
僕は、おねーちゃんに
「おじいちゃんとおばあちゃんに早めのお年玉、貰わない?」
と提案したが、あっさりダメ出しをくらった。
「ダメに決まってるじゃない! そういう楽をするのは、ズルなんだから。でもでも……」
おねーちゃんは、黙ってしまった。
僕は怒られてシュンとしていた。
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