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コトリ、と飲み物を置いた私を、ジャンは嬉しそうな表情を浮かべながら見つめる。
「これはいくら?」
そう言ってジャンに見せたのは、財布から適当に取り出した硬貨の数々。
チラリ、と見てもすぐに計算出来るような金額ではあるけれど。
「ん?そうだなぁ」
ふむふむ、と言いながら私の手のひらの硬貨を眺める様子に、私とハルトの嫌な予感は外れだったのだろう、と小さく安堵の息を吐いた瞬間。
「分からん!」
ニッカー!と良い笑顔を浮かべながら、私達を見たジャンの言葉に、ハルトは食べかけていたパンをポロリと落とした。
「……………えぇっと?ん?ジャン?もう一回言って貰ってもいいかしら?これ、いくら?」
「いやぁ、だから分からんって!こんな額数えたことないぞ!」
「……………お前」
「ん?何だ?」
「お前、バカだろ」
「んー、頭はあまり使った事ないな!そういえば!」
ゲラゲラと笑うジャンに、私は頭を抱え、ハルトは、肺の底の空気を全て出し切るような、深い溜め息をついた。
「思ったよりも前途多難な気がする」
「そうか?俺はフィンが居るなら」
「そんな言葉聞きたいんじゃないわよ」
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