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「ねぇ、フィン。お腹空いた」
「……知らないよ」
「よし、食べよう!うん、そうしよう!」
そう言った目の前のコイツは、「んーッ」とキス顔で迫ってくる。
「うわっ」
ブンッ、と魔法使いの職を手に入れた時に作った杖を思い切り目の前の変態に向けて振りかざす。
無意識に放った炎魔法は、目の前の勇者然をした男にはちっとも当たらない。
「ッチ」
舌打ちをする私を見てもなお、コイツは「フィンちゃーん」と手を伸ばしてくる。
「……キモい!マジでキモい!」
「んなこと言ってぇー。俺のこと大好きなクセにぃー」
「誰がいつ言ったのよ!そんなこと!」
絡み付いてくる腕を払いながら言えば、私の腕を掴んだまま、コイツはこてん、と首を傾げる。
「昨晩、夢の中で何百回も?」
ポッと顔を赤らめながら言う辺りも腹立たしい。
そして、気になることはただ1つ。
(それよりも何よりも夢の中の私、何してんの?!!!)
「もう嫌ぁ!こんな幼馴染みー!!!」
そう、目の前の変態、じゃなかった神託によって勇者になった男と、私は幼馴染みで、コイツは本当に正真正銘の変態なのである。
あぁ、神様、いや、ダメだ。
神みたいなやつがコイツ指名したんだった。
もういいや、この街の憲兵さんでも、誰でもいい。
誰か、本当に!お願いだから、今すぐにこいつを逮捕してください。
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