おばあちゃんの入院

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 おばあちゃんが入院していた病院は、がんの診療を専門的に行っているところだ。実際に目の当たりにすると、思っていたよりもずっと建物が大きく敷地も広くて驚いた。  おばあちゃんのいる病室までたどり着いて扉をノックすると、「どうぞ」という声が聞こえてきたので中に入る。すぐに、ベッドの上に座ってほほ笑んでいるおばあちゃんが目に入った。 「わざわざ来てくれてありがとう。なんだか久しぶりねえ」  おばあちゃんは私をベッド脇の椅子に座るよう促す。病室には大きめの窓があり眼下に街並みが広がっていて、遠くには海が見えた。確かにいい景色だった。 「おばあちゃん、体調はどう?」 「元気だよ。今日からもう普通のご飯も食べ始めたのよ」 「そうなんだ、早いね。安心した」 「栞ちゃんはどう? 1人で不便ないかしら」 「うん、平気平気」  それから私たちは1時間ほど雑談を続けた。思えば2人だけでこんなに長話をしたのは初めてのことだった。
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