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4.
翌日。クリスマス。
誰もが願っているように雪が降るということもなく、生憎の雨。
街のイルミネーションも独り身にはきつく、二重の意味で出かける場所のない逃げ場のない休日を過ごしていた。
こんなことなら、もう一日ぐらいあのストーカー女を引き留めておけば、慰めにもなったかもなどと、手前勝手なことを考える。
クリスマスなど直前に振られた男にとって痛みを伴うものでしかないが、しかしクリスマス自体を悪いと思っているわけもなく、素直に楽しみたいという気分も一応はあるので。
せめてもの妥協案として、コンビニのケーキでも買ってくるかと相成り、朝からずっと座っていたソファから腰を起こし、着替えて外へと向かった。
棚の上の鍵を持って、玄関のドアを開く。
家の前にストーカー女が立っていた。
何の警戒もしてなかったし、もう会うこともないだろうと思っていた俺は、しばし面食らっていた。
彼女の方も、俺が出てきたことに驚いた様子だ。
「どうかしたんですか?」
我ながら、間の抜けた言葉だ。彼女がまた俺のところに現れる理由なんて、良いもののはずがないのに。
「死んでしまおうかと、思ったんですけど」
強烈な返答だった。
「ここに来てしまいました」
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