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3.
女に部屋に貸して1週間以上経過していたが、特に関係が変化したということはない。そのままだ。
ほとんど話すこともないし、そもそもストーカー女は周囲にそれほど関心がなく、うわの空という感じであまり会話という感じにはならない。
ただ、それが本来の彼女の姿というわけでもないようだ。
「うん、まだ仕事で……うん、大丈夫、エリちゃんもね、うん……じゃあね」
わりかしハキハキとした声が、部屋から聞こえてくるときがある。
そういうときは、大抵妹と電話をしているときだった。
仲がいいのだろう。
彼女が電話する相手は彼氏を含めて他にもいるが、妹と話しているときだけはそれとわかるほどほっとしている。彼女は実家住まいで、父も母も健在とのことだが、心を許しているのは妹だけのようだった。
聞いてもいないのに、引っ込み思案な自分を支えてくれた大切な妹だと、俺に語ったことがある。
そんな妹との通話が終わると、曇った表情で携帯を仕舞う。
仕事をしているなどと、嘘をついているのが心苦しいのだろうか。
それから再び双眼鏡を手にして、窓の外を向く。
その様子を、俺は大量にある紅茶を消化しながら眺めていた。
今日はもうクリスマスイヴだというのに、こんなストーカー女と何をしているのだろうか。
急にやるせない気分になり、そして退屈だったこともあって、俺は彼女に話しかけていた。
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