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 冷蔵庫から具材を取り出し、いざ鍋を火にというタイミングで呼び鈴が鳴った。モグラは火を止め、インターフォン越しに声をかけた。 「はい」 「こんばんは。お邪魔でした?」  聞きなれた声。モグラは玄関に向かい、鍵をあけると、来客を部屋に迎え入れた。肉付きの良い身体をスーツで包み込み、ミディアムヘアの黒髪が艶やかなこの女は、ホタルと呼ばれている。 「お、夕飯の支度中でしたか。タイミングが良くなかったです?」  悪びれる様子なく、ホタルは笑った。  モグラはホールトマトの缶詰に手を伸ばし、ナイフで缶を開けると、コンロに火を点け、鍋で薄くスライスしたバターを溶かし始める。ちらりとホタルの方を見ると、モグラの意をくみ取ったのか、脇に抱えていたバッグからファイルを取り出す。 「ここらで最近出回ってる新種のドラッグのことは知ってますよね? あれね、金持ちの坊ちゃん嬢ちゃんのパーティーに出回るようになったそうなんですよ」  モグラは鍋の中に挽肉を入れながら頷いた。一昨日の夜塩を塗りこみ、キッチンペーパーで包んで冷蔵庫にいれ、今日の朝酒と蜂蜜に漬け込み味付け、自分で挽いた肉だ。     
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