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バカにした男がモグラに近寄る。何かを口にしようとし、口を開く。そこにモグラの掌底が叩き込まれる。痛みや苦悶の声をあげることなく、ただ血だけが男の口からあふれ出る。他の見張りが何が起こったのかを認識するよりも早く、モグラの手刀が顎を砕かれた男に振り下ろされ、男は地に伏した。
見張りたちが騒ぎ始める、困惑。それはすぐに怒りへと変わる。モグラは見張りたちが動くよりも早く駆け、確実に急所へと拳を、手刀を、蹴りを叩きこんでいく。
見張りたちは困惑を怒りに変える間もなく叩き伏せられた。
モグラは裏口を抜け、クラブの中に入る。大音量で流れる音楽と絶え間なく明滅し続ける色とりどりのライトの中を歩いていく。見張りと思わしく者に近づき、膝を砕き、喉を潰し、少しずつ奥へ奥へと進んでいく。
誰もモグラを気にもしない。ドラッグと明滅する光が彼らをトランス状態にしていた。モグラは仕掛けを解く。
階段を昇った先のVIPルーム。ガラス越しに下を見下ろすことができる。そこで佐久間は狂乱の宴を楽しんでいるはずだ。
モグラは少し距離をとった場所で立ち止まる。
女に腕を引かれ、足取りのおぼつかない男がガラスの近くにやってくる。モグラは銃を箱から取り出し、そのシルエットに向ける。
大音量で鳴り響くダンスミュージックがさらに音を増していく。低音がモグラの身体を揺らす。まるで心音が内側からモグラの身体を揺らしているように感じる。
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