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 引き金を引く。乾いた音がダンスミュージックにかき消されるが、ひび割れたガラスが銃が発射されたことを証明していた。続けて引き金を引いていく。ガラスが割れ、破片が真下に降り注ぐ。  所々で悲鳴があがりはじめた。  モグラは混乱が広がり始めたクラブを出て、銃を仕掛け箱に戻すと、指定されたゴミ箱へ箱を捨てた。  そのまま上野駅へ向かい、コインロッカーからバッグを取り出し、トイレで着替えると、元々着ていた服をバッグに詰め、同じロッカーにいれ、駅を出る。ロッカーのカギをカーヴァーに渡せば、仕事はすべて終わりだ。  仕事を終えた後でも、やはり外は寒かった。いつからか、殺しをしても心に異様な熱を帯びることは無くなっていた。  家に戻り、しばらく明かりを消した部屋でモグラは本を読んでいた。月明かりが窓から差し込み、本に印字された黒を淡く浮かび上がらせる。そろそろ眠ろうかと考えはじめたころ、モグラの携帯が鳴った。ホタルからの着信だった。 「お見事でしたね。さすがです」 「お前が佐久間を窓際まで誘導してくれたおかげだよ」 「時々優しいですよねモグラさん」 「今どこにいるんだ」 「あれ? お誘いですか?」 「違う。こんな夜中にどこに行くっていうんだ」 「モグラさんの家であれやこれやとかなんて言ったら電話切られちゃいそうですね。とりあえず今は社長のところで休ませてもらってます」 「大丈夫だったのか? ドラッグとか、佐久間に何かされたりとか」     
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