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「それで、社長にじきじきに依頼が来たそうなんですよ。その根を断ってくれってね。手遅れになる前にこちらとしては何とかしたい。警察も動いてはいますが、なかなか根を断てなくて困ってるそうで。あんまり他のシマに手を出すのはよろしくないんですが、そこは社長の交渉術でパパッと済ませちゃいました」 「金か」  モグラは火を通した挽肉にホールトマトを流し込み、かき混ぜながら言った。 「金で納得させるのも立派な交渉術ですよモグラさん」  ホタルの言葉には返答せず、モグラは黙々と鍋と向かい合う。肉を漬け込むために購入した赤ワインのハーフボトルを取り出し、すりおろした玉ねぎと一緒に鍋に注ぎ入れる。 「まあ、ともかくですよ。社長のおかげでこちら側から介入できることになりまして。我々としてはですね、バシッと滞りなく仕事を済ませたいわけですよ」 「そんなパーティーには出るなと言えばいい」  モグラはソースをひと煮立ちさせ、火を止め、パスタケースから紐で括った一束を取り出す。塩をいれた鍋は底がそこまで深くない。モグラはパスタの束を、缶を開けるのに使ったナイフの柄で何等分かに叩き折り、沸騰した鍋にいれた。  ホタルがモグラの手元を覗き込む。話を聞いているのは分かるのだが、返答や相槌がないので少々退屈しているらしい。 「そうもいかないわけですよ。お金持ちというのは我々の常識が通用しないんですなぁこれが」     
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