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陳はいつでもおいでと白い歯を見せて笑った。
「美味しい。前に食べたものよりも数段味が上ね。陳さんは料理ならなんでも上手にできるのかしら」
ワインを飲みながら初音は次々と猪肉の燻製を口に運んでいく。
「それとモグラ。室内ではサングラスくらいとりなさいな」
「この部屋は日差しが強すぎるんです」
「あらそう? 日当たりはいいと思うけど、そんなにかしら」
「目が強い方ではないというのは社長も知ってるでしょう」
最後の一切れを口に運び、ワインで肉を流し込むように飲み込むと、初音は小首をかしげながらとぼけてみせる。
「そうだったかしら?」
「だからこんな二つ名がついてるんです」
「不本意?」
「いいえ。いちいち名前なんて気にする性格でもないので」
「そこそこ長くその名を使ってるのだから、愛着がわいたりしないの?」
「まったく」
「素直ね」
「仕事の話をしませんか」
「せっかちね。ホタルも愚痴ってたわよ? 不愛想でせっかちだって。女が誘ったら男は受けるべきじゃない? なんというか、それが残念な子ならまだしも、ホタルはとってもかわいいじゃないの」
グラスのワインを次々に飲み干しながら初音が言う。モグラはそんな初音をじっと睨んでいた。
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