サンタのおっさん

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ベッドからそっと抜け出して、近くに立てかけてある、クロスというラクロスで使う棒状の道具を両手で握りしめる。 静かにドアに近付くと、運良くドアが少し開いていた。 ドアをちゃんと閉めるようにと母からしょっちゅう注意されるが、役に立つこともあるものだ。 ドアの隙間から廊下の様子を伺う。 ーーそこには、サンタのおっさんがいた。 正確にはサンタの格好をした、パンチパーマのおっさんだ。 人を見た目で判断してはいけないと言うが、その筋の人にしか見えない。 その筋の怖い職業の人が、一番怖い人に命令されて、地域のイベントで無理矢理サンタの格好をしている。 そんな姿だった。 理解が追いつかない。 ボランティアでかわいそうな子供達にプレゼントを配っている? それともクリスマスに乗じて空き巣に入っている? どちらにしても突っ込みどころが多い。 だが、仮に前者だとしても、こんなやり方では疑われても仕方がないだろう。 とにかく攻撃対象であると栞は判断した。 手強そうな相手だ。手加減しないで思いっきりやろう。
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