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原因は交通事故。
そして交通事故の原因は、些細な栞のわがままだった。
当時、栞は16歳で高校生になったばかりで、もう半分は大人の仲間入りをしたと思っていた。
それなのに、クリスマスに父親が栞に贈ったのは大きな熊のぬいぐるみだった。
栞は怒った。
子供じゃないんだから、こんなの要らない。
そう言ってプレゼントを突き返した。
すると父親は一瞬悲しそうな顔をした後で、
「ごめんな。そうだね。もう高校生だもんな。プレゼント、買い直すよ」
と言った。
栞にはそれがまた嫌だった。
本当は悲しいのに隠してしまうところや、明らかに栞のわがままなのに、父親の方から謝ってしまうところが、栞の心をチクチクとつついた。
その後、栞は自分の部屋にこもった。
部屋の窓から父親が車で出かけて行くのが見えた。
父親を見送ったのは、それが最後。
プレゼントを買った帰りに、事故を起こしたのだ。
そんな日に限ってホワイトクリスマスで、視界も路面も悪い状態だったらしい。
それ以来、栞は自分を責め続けている。
もしも自分があんなわがままを言わなければ、父親は亡くならなかったのだから。
今年も家族3人でクリスマスを過ごしていたに違いないのだから。
事故から一年が経ち、周囲の人間の励ましもあって徐々に立ち直り始めてはいた。
唯一の懸念が今日、この日だったのだ。
クリスマスを乗り越えることが出来れば、きっと大丈夫。
そんな気がしていたのだ。
それをこの妙なおっさんがぶち壊した。
栞は絶望にも似た気持ちで床に崩れ落ちて泣いた。
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