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サンタのおっさん
栞は17度目のクリスマスをたった独りで過ごしていた。
独りの夜なんて普通にあるものだが、
それがクリスマスというだけで、こんなにも侘しいものだとは。
ふと時計を確認する。
――まだ22時。
時間が経つのが途方もなく遅い。
母親もまだ、仕事から帰ってこれないだろう。
栞の母親は今年の2月から駅前のレストランで働いている。
別の従業員に聞いたところでは、クリスマスはひどく混むので、日付が変わるまでに家には帰れない見込みだそうだ。
「うちのクリスマスパーティは26日にしようね」
昨日の晩、母は明るくそう言った。
嫌だという訳にはいかない。
クリスマスは家族で過ごしたいなんて言えない。
母がほとんど休みなく働かなくてはいけなくなったのは、私の所為なのだ。
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