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小学生兄妹
テツは、上級生としてトモのクラスの世話をする機会が増えました。トモも学校で活躍する五年生としてのテツを見るようになりました。家の中で見る兄としてのテツとは違う一面に驚いていたトモも、少しずつ慣れていきます。
ある日、トモはマリにピアノを習いたいと言い出します。どうやら、ピアノが上手い子に触発されたようです。トモは、幼稚園のオルガンをいじったことがあります。その時は、音が出るだけで満足していただけでした。マリは、「お父さんと相談してみる。」とその場をすり抜けました。
その晩、父親が帰宅し、子供たちが寝た後でマリから話を持ち出します。「好きな事をさせてやれ」の一言で、マリは明日からピアノ教室を探すことになりました。マリはトモを伴って体験教室へ出かけて、習うピアノ教室が決定します。
それから、マリはトモと楽器店へ出かけました。ピアノをじっくり品定めして、気に入った機種を購入するように契約を結んで帰りました。後日、家に配達されたピアノでトモは練習するようになりました。
野球少年の兄とピアノ少女のトモは、こうやって自分の人生の源流に立ったのでした。
もちろん、この兄妹をエリにはお見通しです。後に二人ともテレビに映る事はわかってます。だけど、本人たちは遠い先の未来の自分はわかってません。
同じ学校で運動会や発表会、全校集会では顔を合わせるのですが、教室で習う時は別々です。学校から帰宅した後の習い事も別々です。
ここから二人の道が分かれてきます。兄妹ですから、いずれは別々の家庭を持つ日が来ます。そこは、小学生だから同じ家で一緒にご飯を食べるなどの付き合いがあります。誕生日になるとケーキを囲んで祝います。マリは宿題を見てやるとか洗い物をするとか母として子供たちに接するだけでした。
子供としては少し温度差が出てきたこの兄妹には、同じ学校で会う日がなくなってきます。六年生のテツには卒業が迫ってます。両親は、少しずつ新学期の準備に追われました。
卒業式になりました。テツたちは卒業証書を受け取り、小学校を後にします。それをトモを含む在校生は卒業生を見送るのでした。
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