血脈の自覚

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幸いなことに、都内でも学力が高いこの高校には、中学までの同級生は一人しか入学していなかった。そのため、その話が実際には嘘である事は誰にもわからなかった。  そんな事も在って、和哉は入学時から新しい友達を作ろうとせず、それどころか極力他人とは関わらない様に過ごして来た。徐々にその空気を察したクラスメイトも、彼の違和感を感じとり、改めて和哉に関わろうとする者は次第に少なくなっていった。  成績はいつも学年のトップ10圏内には入っていたが首位をとる事は一度もなかった。実際はほとんど自宅で勉強していたわけではなかったから、真面目に学業に通り組めば学年首位を取れるほどの学力があったが、目立ちやすい風貌である彼にとっては、かえってやっかみと面倒が増えるだけと考えていた。  更に他の学生と違った点と言えば、ショルダーバッグのほかにいつも紺の長い袋を持っていた事である。長さは1.2メートルほどであろうか。武道に心得のある人には推察できたかもしれないが、ほとんどの人には中身が木刀である事は気付かれなかった。一部、その事を知っている者もいたが、これも彼が名目上、剣道部に所属している事もあり、特段不思議がられる事もなかった。     
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